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私が鬼になった日

今週のお題「わたしの節分」

 

「鬼は~外!」


小さい頃は鬼を追い出す側だった。

 

鬼の仮面をかぶって父親が鬼の役をしてくれた。

「がおーがおー」

 

子どもたちに豆をぶつけられながら一生懸命鬼の役を毎年演じてくれた。

 

もう何十年も前のことだ。

 

 

今年、私は初めて鬼になった。

「がおーがおー」

 

子どもが生まれ、父親になり、我が家では私が鬼の役を担うようになったのだ。

 

子どもが生まれて初めて親の気持ちがわかるようになった。

 

 

子どもたちのために追い出される鬼の役を買ってくれた父さん。

 

下手くそな演技で一生懸命「がおーがおー」と鬼を演じてくれた父さん。

 

鬼なって初めて父親の気持ちがわかった。

 

 

はしかになって入院した時に欲しかったミニカーを買ってきてくれた父さん。

 

休みの日に一緒にキャッチボールをしてくれた父さん。

 

ツーリングで海に連れていってくれた父さん。

 

 

鬼の仮面の下で小さい頃の思い出がよみがえってきた。

 

 

小さい頃は毎日会っていたけど、今は離れて暮らし、会うのは月に一回あるかどうか。

 

一人暮らしの父さん。

 

口には出さないけど寂しい思いをしていると思う。

 

 

私は鬼ヶ島に行くことにした。

 

引退した鬼に会うために。

 

父親と飲むのは何年ぶりだろう。

 

いや、ふたりで飲むのは初めてかもしれない。

 

 

私の息子は現在1歳である。

 

私が1歳の頃のことはもちろん覚えていない。

 

でも今はなんとなくどんな言葉をかけられていたのか、どのようにふれあっていたのかわかる気がする。

 

私が息子を愛するように父さんは私のことを愛していてくれたのだと感じる。

 

 

小さい頃は父親が嫌いな時期もあった。

 

「本当に嫌な父親だ」と思ったこともあった。

 

でも父さんは私のことを大切に思っていてくれた。

愛していてくれた。

 

鬼になって初めてその気持ちがわかった。

 

「父さん、ありがとう」

 

今年、初めて父親に感謝の気持ちを伝えることができた。

 

ふたりきりの鬼ヶ島で。

 

その時初めて父さんの涙を見た。

 

今まで何があっても泣かなかった父さん。

 

昔よく私に「そんなことで泣くな」と言っていた父さんが泣いた。

 

鬼の目にも涙とはこのことなのだろうか。

 

この日はふたりで涙を流しあった。

 

 

映画『シェルタリング・スカイ』にはこんなセリフが出てきます。

 

「あと何回満月を眺めるか?せいぜい20回だろう。だが、人は無限の機会があると思い込んでいる」

 

毎日会うことがなくなった父親に会えるのはあと何回だろうか?

あと何回感謝の気持ちを伝えられるだろうか?

 

「孝行のしたい時分に親はなし」ということわざがあります。

 

照れくさくて「ありがとう」なんて言えない。

 

でも今年の節分はその「ありがとう」を伝えるいい機会になりました。

 

これからも素直に自分の気持ちを伝えていきたい。

無限にはない、機会のために。

 

父さん、ありがとう。